「すいません、彼女が深刻な顔をしてたので、あつかましいのはわかってたんですけど誘ってしまいました」
真剣そのものの眼差し……じゃない、こやつはそんな純粋な奴じゃない。
きっと何か考えているものがあるだろう。
黒い黒い腹のなかて、煮えくりかえってるものがあるのだろう。
そうとも知らない悠は、あまりにも瀬戸内くんが低姿勢なもんだから
調子に乗って横柄な態度をとる。
「人のもんって……あんたわかってる?
まあこんな女、色気ねえし、可愛げねえし正直もう飽きてきたから、くれてやってもいいけど」
暴言の数々。どれも、わたしの心をえぐる。
……あー、情けない。
自分がついさっきまで好きだった男がこんなクズだったなんて。
自分の不甲斐なさに泣きそうになったけど、瀬戸内くんがそうはさせなかった。
わたしの顔を見ると、優しく微笑んでおいで、と言ってくれた。
だからわたしは、悠と横をくぐり抜けて瀬戸内くんのところに行く。
すごく小さい声だったけど、泣かないでって言ってくれた気がした。
「───なら遠慮なくもらってく」
彼の目は、鋭く光っていた。