愛想笑いなんて、サルでも出来ると思っていたけど
彼には出来なかった。
仏頂面で接客をし、だるそうな声でお客に対応し
料理の経験はまるでないことが判明した
。
……おそろしく、使えない奴だ。
ーー
無事に彼のバイト初日が終了。
わたしたち二人は先に上がっていいと言われたので
廊下を渡り、奥にある自宅のほうへ足を運んでいた。
「瀬戸内くん!」
「……ん?」
「さっきは話聞いてくれてありがとう」
「……」
見られてることは想定外だったけど、でもそのおかげで
「ちょっと楽になりました」
こくり、と頷く彼。
もう眠いのか目がトロンとしてる。
……う、ここへ来てその反応はズルイ。
さっきのしかめっ面から一変、こんな愛くるしいお顔になるなんて!
可愛いすぎるよ……
「……眠そう」
「……ん」
この顔のほうが接客には良いのかと思ったけど
これで、客が女だったら、間違いなく襲われるな
なんて思いながら、濃すぎる1日はなんとか幕を閉じた。