勿論、寝ている女性を襲うような真似はしないけれども。

……まして、お嬢さまを襲うなんて。

執事失格だ。




寝息をたてて寝ているお嬢さま。

昔と変わらない寝顔を眺めていると、突然、幼い頃の記憶が蘇った。



お嬢さまは覚えているんだろうか。

お嬢さまは僕と結婚の約束をしたことを……。

僕が婚約指輪の代わりに渡した花で作った指輪。

お嬢さまはそれを受け取って、


「私、司のお嫁さんになる!」


なんて、今も変わらない純粋な笑顔で言ったことを。