「くれぐれも、紫苑には近づくなよ。」





階段を上る際、沢渡先輩の声が聞こえたけど。



私から一ノ宮先輩に近づいたことは、一度も無いから。





見えるはずもないのに、私はふと二階の渡り廊下を見た。



やっぱり、煙は見えなかった。








――ガラララッ





「あ、柚子ちゃん! 今日は遅かったね!」





美術室のドアを開ければ、菜子ちゃんが直ぐ様私のところへと来る。





菜子ちゃんのキャンバスを覗けば、南校舎から見える中庭を描いてたみたい。



菜子ちゃんは背景や風景を書くのが上手。





ほんのり夕暮れで赤く染まっている中庭の噴水が、とても綺麗だと思った。