一年前、この道が壁のように感じた。
灰色の瞳が離れるまで、私はこの道を渡りきれなかった。
……今は違う。
自分の足で歩いて、距離を縮められる。
「迎えに来てくれたんですか?」
「待ちきれなくて。」
繋がれた手と手。
間にある、私と先輩が縮めた距離感。
「今日の柚子、なんか可愛くてドキドキするんだけど……。」
先輩はそう言って、道路の向こう側を見つめることなく、歩き出した。
手を引かれ、思う。
幸せだ、と。
もう私は、お姉ちゃんの影じゃない。
お姉ちゃんはお姉ちゃんで、
私は私。
先輩は振り返らなかったけれど、私だけは振り返って。
今だに花が置かれている横断歩道の隣を見た。