沢渡先輩が去って直ぐ、信号は青になる。
信号を渡ろうとしたとこで、向こう側に誰かがいることに気づいた。
強い想いを抱いた灰色の目が、ジッとこっちを見ている。
「一ノ宮先輩……。」
一年前、ここで私と一ノ宮先輩は出会った。
でも、違う。
制服じゃない。
登校時じゃない。
目も切なげじゃない。
「おはよ、柚子。」
何より、先輩が見ているのは、私の後ろじゃない。
「っ、おはようございます、一ノ宮先輩!」
向こう側と、こちら側。
道を挟んだ挨拶。
一年前の向こう側と違って、今向こう側には、私を想ってくれている一ノ宮先輩がいる。