両親は、自分を大切にしてくれていただろうと思う。
私がそう感じられなかっただけで、精一杯愛を注いでくれていたのかもしれない。
特別格式の高い家という訳でもない。
サラリーマンの父と、専業主婦の母。
極々普通と言われる、中流階級の家。
そこに長女として生まれた自分。
やがて妹、弟が生まれる。
親に敷かれたレールを黙々と走り、認められようと必死に努力した。
成績は悪くなく、むしろ良い方で、なんでもソツなくこなしていた。
だが。
高校受験に失敗した。
自身で決めた場所ではない、親の意向が十二分に反映された進学校だった。
あの時の両親の落胆ぶりといったらなかった。
人生で初めての挫折は、親との関係に溝を作る。
春になり、滑り止めの学校に通うことになった私は、今までいつも前に出されていた目標を失くし、家庭での居場所も失くしたように思えた。
二人の期待に添えなかった自分に、何の価値があるのか分からなかった。