「祈さん、こんにちは。」
大きな白いスライドドアを開けると、神成がいつものように、椅子に座ったまま、白衣姿で挨拶した。
「…ごほ、、、こん、にちは」
毎回マスクはしてきていたが、今回ばかりは変装用ではない。
「あれ、風邪ひいたのかな。」
「ちょっと…はい…」
焼けるような喉の痛みに、顔を顰めながら返事する。
「辛そうだね、市販薬とか飲んでなければ、薬、出しておこうか。」
「あ、、えっと…はい。ありがとうございます。」
親切な申し出に、とりあえず感謝しながらも、目はどうしても、彼の薬指に行ってしまう。
「あれからどう?自分の時間、少しはトライしてみてくれた?」
そんな私に気付いているのかいないのか、神成は診察を始める。
「…一応、は…」
「一応、ね。ちなみにどれくらい?」
「2、3分…」
結局一ヶ月経っても、ほぼ、取れてはいない。
中々難しいものだ。
「…まぁ、頑張った方かな。やってみて、何か感じたこと変わったこと、ある?」
神成は、がっかりした様子はおくびにも出さず、質問を続ける。
だから、実際がっかりしたのかどうかは定かではない。