紋白を見るとまたひらひらと手を振っている。
もう行けと言っているのが分かる。
結局何も教えてくれないことにため息をついてから階段を降りていく。

『いってらっしゃい』

送り出される言葉にまた振り返るが、そこに紋白の姿は無かった。
微かに残っているあいつの香りが鼻を擽っていく。
本当に不思議な奴。
大きな深呼吸をしてから歩き始めた。

いつぶりかの、【いってきます】を小さく呟きながら。


部屋を横切り、一階に行く階段を降り始めたとき……、
小さな声が聞こえた気がした。
あいつの声は、不思議と力が出るような気がした。


【頑張って…、…、…、】