驚きで動かなくなった私の顎を親指と人差し指で固定し、仮面を少しだけずらして顔を近づけてくる。
唇と唇を間近まで近づけ、吐息を絡め合ったあと、私の額に口づけを落とした。
擽ったさに目をつむってしまう。

『おまじまない』

甘優しく囁かれ息が詰まってしまった。
人生初の口づけに私の頭のなかはぐちゃぐちゃに掻き乱されていた。
半分放心状態でまばたきを繰り返していると、顎を固定していた指が離れ心臓がある辺りをつついた。

『怠惰を一度だけ嫌なことから守ってくれる。 強い意思と心を持って?』
「…あんたは、何者なの?」

紋白を見つめるが肩をすくませるだけで何も答えてくれない。
……強い意思と心。
昨日言っていた幻術と何か関わりがあるのかもしれない、そう思い何度か小刻みに頷いた。

『いい子だ。 俺を知りたいなら…』

一旦言葉を区切り、一呼吸置いてから私の頭を撫でながら呟いた。

『早く俺のところまでおいで?』

その言葉と同時に肩を掴まれ、後ろを向かせられる。