伊波琉希かぁ…。
私は頬杖を付いて、教壇の前に立っている伊波の姿を眺めた。
やっぱり、気のせいかな…?
伊波琉希なんて名前、記憶にないし。
「伊波はご両親の転勤で埼玉から東京に引っ越してきたそうだ。こっちには知り合いもいなくて不安だろうから、仲良くしてやるんだぞ」
「「「はーい!」」」
クラスメート達は、まるで小学生のような無邪気な笑顔で返事をする。
埼玉…。
私も小学生の途中まで埼玉に住んでいた。
何だか懐かしいな…。
今ではすっかりこっちの人間になっているけど、元住んでいた場所のことは忘れられない。
苦しい思いばかりしていた。
孤独で誰も信じられなくて、心を閉ざしていたあの頃の日々……。
懐かしくはあるけど、あの場所は…私の辛い過去しか残っていない。
二度と帰りたくない故郷。