「…いや、いいよ。前の俺のことは忘れてくれていい」
しかし、勢いよく言った言葉は、伊波の一言に遮られた。
忘れてくれていい…?
忘れられて苦しかったんじゃないの?
ショックだったんじゃないの?
なのに、何で急に…。
伊波の真意がわからなかった。
「思い出されるのは、正直ちょっと…怖いんだ。だから、忘れてくれてていいよ」
怖い…?
ますますわからない。
「じゃ、凜。俺のことは琉希って呼んでね?」
意図的に話題を変えて、伊波が笑う。
苦しげな表情は、もうそこにはなかった。
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