伊波…。
そうだよね。
忘れられるって辛いよね…。
埼玉から越してきて、慣れない東京での生活。
友達もいなくて、知らないことだけで不安な時に、知り合いに出会ったら嬉しいに決まってる。
縋りたくなる。
その気持ち、凄くよくわかるよ。
私だって東京人じゃないから。
出身は伊波と同じ、埼玉なんだ。
東京に来たばかりの頃は、不安なことも多かった。
「また…仲良くしてくれる?」
窺うような視線。
「俺のことは思い出さなくていいから…。だから、一から友達として仲良くしてこ?」
『うん…』
申し訳ない気持ちになりながら、私はコクリと頷いた。
『ごめんね…。思い出せなくて』
謝罪すると、伊波は大丈夫と言って笑ってくれる。
「俺は凜と話せればそれでいいから。会えただけでもほんとに嬉しいし」
そう言う伊波の目に曇りはなくて、本心なんだろうなと思えた。
私も伊波につられるようにして笑顔になる。
『でも、思い出せるように頑張るね!』
伊波と私はどこで出会ったのか。
また、どんな関係だったのか。
少し気になっていた。