「俺のこと…覚えてないの?」
伊波は何かを懇願するような、切なげな眼差しを向けてくる。
忘れちゃったの?
どうして?
悲痛な叫び声が、伊波の目を通して伝わってくる。
『ごめん…。覚えてない』
ずば抜けた容姿を持っている伊波と知り合いだったのなら、そう簡単には忘れないはず。
すれ違っただけでも、目を奪われそうな雰囲気なのに。
けれど、懐かしさは感じなくて。
会ったことあるような…ないようなと、思考はその境界線を行ったり来たり。
必死に記憶を辿って思い出そうとしても、伊波と過ごした日々のことに関しては、何も浮かんでこなかった。