やばい…。
心臓がバクバクと音を立てて高鳴っている。
顔…赤いかもしれない。
「会えて嬉しいよ…!もう二度と会えないんじゃないかって思ってたから……」
えっと…えっと…。
感極まっている伊波の腕の中で、私は何事かと必死に状況を把握して整理しようとするけれど、この現状に頭がついてこなかった。
この人は誰……?
彼の腕の中でもがき、やっとの思いで伊波から離れる。
「ん?」
「どうした?」というように、小首を傾げる伊波。
私を見つめる視線が優しい。
だけど……。
『ごめん…。誰、だっけ……?』
知り合いみたいな言い方をする伊波に対し、私の記憶の中には、伊波の存在などこれっぽっちもなかった。
どこかで見たことがあるような気もする。
だけど、気がするだけで、名前を聞いても、顔を見ても、伊波のことは全く思い出せなくて。
ほんとに思い出せない…。
どこかで会ったことあるのかな?
人違いじゃないよね…?
戸惑う私。
そんな私の様子を見て、今まで穏やかだった伊波の表情が突如、陰りのあるものへと変貌した。
悲しそうで苦しげな…。
落胆した顔に。