「……行きましょうか」


 とまっていた歩みは、無口な男の一言で進みはじめた。

 黒髪に眼鏡をかけた少女、筋肉質な男、無口な男、そして、俺。誰も会話を交わすことなく、一直線に伸びた廊下を歩き続けた。

 しかし、いくら歩けど、コンクリートで出来た天井、壁や床……そして、それを照らす照明しかない。

 どれくらい歩き続けたのか分からなくなってきたその時、俺の前を歩く筋肉質な男が足をとめた。


「……?あの……?」


 不思議に思い、表情を覗き込むと、筋肉質な男はまっすぐ前を見つめながら固まっているようだった。その額には汗が滲み出ている。やがて、俺も前に視線を向けてみた。


「……っ!」


 俺も、固まった。

 だって、目先の床に横たわっているのは、さっき走り去ってしまった女性だったから。いや、それだけじゃない。その女性は――真っ赤に染まっていた。

 あれは……血?

 やがて、他の2人も前方を見たが、同じように固まるだけだった。


「死んで……いるんでしょうか?」


 震える少女の声にハッとしたのは、筋肉質な男。彼はすぐに彼女のもとに駆け寄り、安否を確かめた……が、やがてガックリとうなだれた。

 どうやら、死んでいるらしい。血が出ているということは、死因は外傷によるものだろうか?近くに怪我を負わせる何かがあるのだろうか?


「見た限り、死因は――」


 ――ズンッ!

 筋肉質な男の言葉は、それ以上は続くことはなかった。永遠に。なぜなら、先程と同じように、彼の近く“のみ”の天井が落ちてきたから。

 突然のことに、逃げる隙など当然あるはずもなく、筋肉質な男は天井に潰されてその生涯を終えた。