「あなたたち、よく平然としていられるわね」


 不意に、黒髪に眼鏡をかけた大人しそうな少女が口を開いた。


「なに?」

「見たでしょう?人がいっぱい死んだわ。それも、私達の目の前で」

「ああ、見たさ。俺達は別に平然としているわけじゃあない。怖いぞ。怖くて、たまらない」


 少女と筋肉質な男が会話していると、無口な男が口をはさんだ。


「そう言うお前は、平然としていられるんだな」

「……いいえ」

「……?」

「……私も、怖いわ」


 少女は俯き、言う。その声は震えていて、本当に怖がっていることは見て取れた。

 みんな、怖がっているんだ。まあ、当然っちゃ当然だよな。いきなりこんなところに連れて来られて、初対面だといえど人が何人も目の前で死んだ。怖くないわけがないし、俺も……怖くてたまらないのだから。

 それでも、平然を保とうとしているのは、下手にパニックになって危険な目には遭いたくないし、こういう時だからこそ落ち着こうと思っているから……だと思う。

 少なくとも、俺はそうだ。下手に動いて命を落とすのは、ごめんだ。こんなわけの分からない状況で、場所で、死にたくはない。