目の前の現状に、唖然とするほかない。

 犯人の目的がなんなのかが分からないし、言い表せないほどの不安と恐怖が込み上げて来る。せめてもの救いは、知らないとはいえ、他にも人がいることだろうか。不謹慎ながら、少しほっとする。


「これからどうなるのか分かりませんし、一応、自己紹介の方を――」


 ――ぴんぽんぱんぽん♪

 眼鏡をかけた、制服を着ている真面目そうな男の学生が話している途中、まるでそれをさえぎるようにして、軽やかな音楽が流れた。迷子のお知らせなどでよく聴く音楽だ。

 みんなは各自の動きをやめ、突如流れたその音楽に耳を集中させる。

 音楽が鳴り止み、シンと静まり返ると、今度はまるでロボットのような……無機質な女性の声が流れた。


「ゴールを目指して、がんばって最後まで生き延びてください」


 言葉はそれだけだった。その女性が言い終わるや否や、扉が開かないように塞がれていた鉄の棒が引っ込み、鈍い音をたてながらゆっくりと扉が開いていく。


「な、なんだ……?」


 誰かが呟く。他のみんなは何も言わなかったが、その表情は緊張で強張っているように見えた。


「……これ、進むの?」


 やがて、露出度の高い服を着た女が、尋ねるように口を開く。

 扉の向こうもやっぱりコンクリートで出来ていて、どうやら一直線に伸びた長い廊下のようだ。

 しかし、あまりにも長すぎるためか、先がどうなっているのかは見えない。終わりのない廊下のようにさえ思えてしまう。