「ん……」


 目を開けたら、俺は冷たいコンクリートの上で横になっていた。ふかふかのベッドの上で寝ていたはずのに、どうして、こんな……。

 重い頭を上げ、身体も起こしてみると、周りに知らない男女が1、2、3……9人、いた。俺を合わせて、この場にいるのは10人だ。

 黒髪に眼鏡をかけている大人しそうな少女に、アクセサリーをいっぱいにつけているギャル男……角刈り頭をした筋肉質な男に、露出度の高い服を着た女――と、性別も中身もバラバラな人達ばかり。

 何が起こっているのか理解出来ないでいる俺に対し、1人の少女が口を開いた。


「気が付いたら、みんな、ここに連れて来られていたの。私達、誘拐されたのかもしれない」

「え……?誘拐?」


 部屋を見渡すと、確かに知らない場所だ。天井も壁も床もコンクリートで、窓は1つもない。それなのに明るいのは、電気のおかげなのだろう。

 部屋の一面だけに扉のようなものがあるが、何やら鉄の棒のようなもので頑丈に固定されており、開きそうにない。


「クソッ!誰だか知らねーけど、こんなところに閉じ込めてよぉ、マジでふざけんなっつーの!」


 ギャル男はかなり苛立っているらしく、コンクリートの壁を思い切り蹴った。……が、壁はびくともしない。


「ダメ、圏外。使えないわね」


 露出度の高い服を着た女は、ピコピコと携帯電話を操作しながら言う。

 この状態が夢でもなんでもなく、現実なのだとして……俺達は本当に誘拐され、ここに閉じ込められたっていうのか?!