「っはぁ、はぁ」
屯所、前川邸まであと少し
もう、芹沢は暗殺されてしまっただろうか
お梅は無事だろうか…………
お梅はとても気さくで、美しくて、優しさ人だった
華蓮がどうして壬生浪士組にいるのかを深く聞いたりせず、ただの友人として話しかけてくれた
それがどんなに嬉しかったか、お梅は気づいているだろうか
彼女に死んで欲しくない、彼女に刀を向けて欲しくない
───どうかっ……………───
飲み屋から全力で走りつづけ、足は限界に近かった
「……屯所……………」
前川邸の門に着き、華蓮は中をそっと覗こうとした
──ガシッ
何者かに腕を掴まれる
華蓮はとっさに剣を抜きながら振り向いた
「何者だっ!!……って、え?」
「案ずるな、俺だ」
手を掴んでいるのは斎藤だった
「なんだ、脅かさないで下さいって……
離してください!!」
「それはできない、今すぐここから離れるぞ」
斎藤は華蓮の腕を無理やり引っ張った
「嫌です!!離して下さい!!」
「駄目と言ったら駄目だ
お前だってわかっているだろう
いくら芹沢さんの身を案じたところで今更どうにもならない
それどころか今行けば、どうなることか……」
斎藤は華蓮が芹沢を助けたいと思っているのだと勘違いしていた
「ち、違います!!
芹沢さんは……きっと、覚悟していると思うんです」
それどころか、殺されるのを待っているかのように感じていた
「ならば、何ゆえここに来た?」
「お梅さんが心配だったんです!!」
斎藤の不意を突いたのか、華蓮の腕を掴む手が少し緩む
その隙に思い切り腕を動かして振りほどき、急いで前川邸に入った