文久三年九月十八日
壬生浪士組局長芹沢鴨が暗殺される日
芹沢と古株の幹部屯所を出ては飲みに来ていた
作戦は芹沢をベロンベロンに酔わせ、屯所に帰り、寝静まったところを襲う、というものだった
単純過ぎて上手くいくかどうか心配であったが、思ったより事は順調に運んでいた
ただ、華蓮にはもう一つ心配ごとがある
お梅のことだ
いくら女と言えども、芹沢暗殺時にその場にいれば殺されるだろう
華蓮は土方に言われた仕事以外に、お梅を逃がすことを独断で決意していた
だって、どう考えても、お梅が殺される理由はとこにもない
華蓮は初めての心から信頼できる友人を失いたくはなかった
「おい、湊上蓮」
上座に座る芹沢が華蓮を呼んだ
「はい」
スッと立ち上がり、芹沢の元へ急いだ
華蓮はお酒が飲めないためいつも通りだが、芹沢は既に酔っている
「酌をしろ」
その一言は芹沢が酔っていることを感じさせないほど落ち着いていた
「私が、ですか……?」
突然の命令に戸惑うが、周りはうるさくあまりこちらを気にしていない
気づいているのは恐らく、近くにいる近藤と土方、山南、それから勘のいい沖田と斎藤くらいだ