視覚や嗅覚があっても、いい事ばかりではなかった。


最初に感じていた土の臭いを、再び強烈に感じることになったのだ。


よくこんな場所に何カ月もいられたものだと、自分で自分を感心してしまうくらいだ。


どんなに臭くても、ここから動けないのだから仕方がない。


あたしはただただその異臭を我慢するだけだった。


骨になってまた月日は流れた。


土の中で眠っていたカエルやヘビたちが、一斉に動き出したのだ。


あたしも外気温が上がって行くのを理解していた。


皮膚も眼球も鼻も、すべて腐ってしまっているのに理解できるなんて、とてもおかしな話だ。


しかし、冬の間に感覚が戻らなくてよかった。


とも思う。