「おお、うまそう」

先輩はそんな事ちっとも考えていないみたい。
箸でさっと卵焼きを口に運ぶ。

「うん、うまいよ。ありがとな」

そう言いながら、まどかの頭をなでた。
それだけで、まどかは世界一幸せだなと思う。

ああ、卵を焼いてきてよかった。

本当のところは、先輩の為に焼いてきたわけじゃなくて、ママが
「卵ぐらい焼きなさい」
って言うから、焼いただけなんだけど。

口うるさいママに感謝しておこう。

「そういえば、まどかテストどうだった?」

う・・・・。

「えっと~、数学は先輩が教えてくれたとこはできたよ。あとはまぁ、それなりかな」

「それなりって・・・」

あははと先輩は笑う。
でもすぐ真顔になって続ける。

「オレも今年は受験だから、来月から塾に行く日を増やすんだ。だから次の期末テストは教えてあげられないと思う。
ごめんな」

頼ってるまどかが悪いだけで、先輩はちっとも悪くないのに謝ってくれる。