私は帰るとすぐに部屋へ行こうとした。 だけど、階段を登ってる時に後ろから声が聞こえた。 「野亜」 とても低い、大人の声。 私はこの声が誰だかわからなかった。 振り向くとそこには 「……お父さん?」 いつも家にいなかったお父さんが今日は珍しく帰って来ていた。 私がこの家に来てから今日初めて、お父さんは家に帰って来た。 お父さんの声を忘れてしまうぐらいに お父さんの事を覚えていなかったのだ。