見てはいけない者を見てしまった。

それなのに、

その強いまでの美しさに

目が離せない。

心拍数が上がり、熱を帯びる身体。

ドアガラスに映ったその者は、

わたしを後ろからそっと抱き締める。

漂う芳香に酔ってしまいそうになる。

そして、頭に響く優しい低音。

「焔(ホムラ)。わたしを思い出せ。」

それだけ言うと、

その者はクスッと小さく笑い・・・消えた。