「下ろして……っ」

階段の途中で葵にそう告げると静かに下ろされた。

ステージでの子どもたちの太鼓が聴こえてきて、階段はお祭りから切り離された寂しい雰囲気だった。

誰も通らない階段で私は座り込む。


「結愛」

「私、我が儘なんて言えないよ」


あんな。
あんな苦しそうな皇汰の顔なんて見たくない。

これからずっと側にいても、きっと皇汰は岸六田先生を忘れない。


「私の好きな皇汰は、ちょっと子どもっぽくて、笑顔が可愛くて、何でもできる王子様で」

「ふむふむ」

葵が隣に座って、乱れた髪を撫でてくれながら話を聞いてくれた。


「だから、王子様にはお姫様がお似合いだと思ったの」

皇汰には失恋は似合わないから
ぐいぐい口説いて上手くいってほしくて。