二人はあのシンデレラの階段を降りていく。

行かないで。

行かないで。


自分のバカさ加減に、顔を上げられない。


折角の葵の舞なのに。


「結愛!」


名前を呼ばれて顔を上げると、神楽殿から葵から舞い降りてきた。


「追いかけるよ!」


ふわりと葵に担がれると私を担いだまま、葵は走り出す。



「葵、舞は?」

「終わらせた」

「終わらせたって」

「今は結愛の方が大事だから」


そう言って走り抜ける葵の足は裸足だった。


最初から裸足のシンデレラが階段を下りたら、誰が探せるんだろう、とか思ったりしながらも。



優しい葵に担がれながら泣いた。

声をあげて泣いた。



階段の途中に猿のお面が落ちていて、追い付くのは無理なんだと分かってしまう。