「やっぱ待たない。行くなら待たない」

我が儘を吐いてみる。

葵の綺麗な舞を台無しにするような酷い顔で。


「代わりじゃない。結愛が良いって言えないなら……行って」


込み上げてきた涙が、後ろから抱き締めてきた皇汰の腕に落ちていく。

ポタポタと落ちていく。


「それでも……私が好きになった子どもっぽい皇汰なら」

溢れ落ちた涙に葵の舞が浮かぶ。



「行くと思う」

ゆっくりと私から腕を振り払った。



しぃんと静まり返った空を、舞う葵。

皇汰は走り出して岸六田先生のもとへ走って行くと、
そのまま手を握り、連れ去って行く。


岸六田先生は、一瞬だけ慌てたけれど、追いかけようともしない状況を理解していない、岳理さんの隣に座る人に寂しい笑顔を向けると黙って連れて行かれた。