月夜に浮かぶ葵は妖艶で、途中わざと外した鬼の面から顔を出した葵は、優しい満ちる月のような穏やかな笑顔だった。
そんな笑顔で私を見ている。
後ろから皇汰に抱き締められているのに。
「岳理さんの横、あの人?」
笛を吹く岳理さんの横で、優しそうな穏やかな笑顔の美形さんが座っている。
さらさらの薄い茶色の髪の優しさが滲む瞳の。
その美形さんに寄り添うように、岸六田先生もいた。
紫の浴衣に髪をアップにした岸六田先生は、その美形さんを頬を染めて見つめている。
皇汰とは正反対な雰囲気の人を。
「行ってきなよ。皇汰の方が良い男だから」
「結愛」
「待っててあげるよ」
嘘だ。
嘘を付いた。
離してほしくはないのに。
行って欲しくなんてないのに。