…待って。待ってそれって、つまり…
「そう。その酔っ払ったすみれさんと僕は話すようになったんだ。あまりにも危なっかしかったから僕が話しかけて、それからね」
「え…え?」
「色々聞いたよ。彼氏の話も聞いたし、仕事の話も聞いたし、あと怒られたりもした。でも毎回次会う時には忘れててさ…」
「ちょ、ちょっと待って!」
「うん?」
「毎回って、そんな何回も話してたの?」
「そうだね」
「え、でも私覚えてないよ?」
「酔った時だけだったからね。初めて話した次に会ったのがシラフの疲れ切ったすみれさんだったんだけど、こっちに気づきもしなくてさ。視界に入ってるけど知り合いっていう捉え方じゃないって言うのかな。だから完全に無い事にされてんだと思って少し腹たったんだよね」
「……」
「でもその後またベロベロになったフラフラのすみれさんを見つけて、無視された訳だしほっとこうと思ったんだけど、ついほっとけなくて声かけたんだよ。そしたら完全に忘れててね…その時教えてくれたよ、多分明日には忘れてるって。いつもそうなんだって。だからもういいんだって。なんかヤケになってたよ」
「……」