「初めて見た日とかは覚えてないけど、よく見るうちにここに住んでる人なんだってすみれさんの事が分かるようになってさ。夜帰って来る時間が重なるんだよね」


バイト上がりの時間とか、飲み行った帰りとか。なんて言われて思い浮かぶ私は…どうやらその頃から残業に残業を重ねていたらしい。

あぁ…と、察した返事をする私に拓也君もその意味を同じように受け取ったみたいで、そうだね、いつもすみれさん疲れた顔してたよ。と付け足された。


「その頃の僕は遊びたい盛りというか、楽しい盛りというか、毎日適当に好きなように生きてたからさ、そんなすみれさん見るとなんかこう…大人になるってこういう事なんだなって思ったりしてね。それが余計に興味を持たせたというか、印象に残ったというか」

「……」

「あはは、そんな顔しないでよ。だからね、そのうち僕はすみれさんが元気な日とか分かるようになったんだ。それでその後…その理由を知る事になって」

「……」


理由。私が元気な、その理由。

疲れ切ってるのは今と変わらず仕事の事だとして、その頃の私にあった元気になれる出来事、なんて言ったら…


「…彼氏の前だとすみれさんって、すごく元気なんだよね」