「ほら、紗耶はお父さんの表情ちゃんと見たことある?」
「お父さんの表情?」
「そう。お父さんほら、メガネかけてるじゃない?またそのメガネがちょっと曇ってる感じで、中からはどう見えてるのかわからないけど、これだったら目元とかよくわからないじゃない?」
確かに……
「よく考えてみたら、お父さんの表情よくわからないかも」
「なんかそれひどくないか?これでも父さん、紗耶が赤ちゃんのころは全然メガネなんてかけてなかったぞ?」
「そうなの!?
わたしてっきり、お父さんって一生……産まれてからずっと老眼なのかと思ってた!」
「ハハハ……ひどいな。まぁ、高校の頃はちょっとかけてたかな?……でもこれずっとかけてるけど伊達メガネだし」
えー!!!
「昔の事情は知らないけど今はなんでかけてるの?わたしが赤ちゃんの頃はかけてなかったんでしょ?」
「それは……」
「ママがねお父さんにかけててって言ったの。絶対外さないでって」
「……なんで?」
「それはねー」