彗は天才ピアニスト
………だった。
コンクールに出れば賞を取り、
海外でのコンクールでも入賞常連。
テレビでも取り上げられ、
雑誌でも取り上げられた。
あとは…
恐ろしいほど整った顔。
ファンは数えられないほどいる。

そんな彗が事故にあい、
大怪我をした。
彼の話によると怪我が治っても
後遺症でピアノは…。

今、誰か一番辛いのか。
それは彗だと思う。
だけどだけど…。
私だって辛い。
あんな言葉、ききたくなかった。

暗くなった空には
星が輝いていた。
それを見たら、泣きそうになった。
冷たい風が目にしみて、
さらに涙が出そうになる。

ドンッ…

「あっ、ごめんなさい。」

うつむいて歩いていたからか、
誰かにぶつかってしまった。

そうだ。
上を向いていなきゃ…。
きっと、夢は叶えられる。

気持ちを切り替えて、
スキップするように歩き出した。

彗には
ピアノをやめて欲しくない。
それに私達の歌を…。