「もう僕には無理なんだ。」
今、なんて…?
私はこんなことをききたくて来たんじゃないのよ?
彗が事故にあったときいたのは今朝のこと。
私は慌てて病院にきた。
「…本当に?」
鼓動が速くなって、
頬が熱くなる。
彗は私から目を逸らし、
外を見た。
「出来るかもしれないけど可能性は低いし、上手く出来ないと思う。」
その言葉には感情が無いように聞こえて
胸が苦しかった。
「他の人に頼んで。」
彗は私に切なげな笑顔を向けた。
そんなことできるわけないのに…。
他の人なんているはずもないのに。
「本当にごめんな。…完成したら聴かせて?」
何も言わない私を心配してか、
彗は私の頭を左手で撫でた。
完成なんてするはずない。
彗とじゃなきゃできないのに…。
「奏音…?」
「あ、ごめん…。」
「ピアノなんて、楽譜通り弾けば誰が弾いても変わらないよ。…それに、奏音の曲なら誰が弾いても素敵なものになる。」
そんなわけないじゃない…。