“ガタンゴトン…ガタンゴトン…”


まだ始発だというのに
この狭い空間の中は沢山の人に溢れている


スーツを来たサラリーマン
酒臭い服装の乱れた男

そんな人ばかりの中に
私は1人 ポツリと立って電車に揺られている



「ちょっと寄りかからないでくれませんか」


「あ、すみません…」



この満員電車の中で
寄りかかるも寄りかからないもないじゃない

そんな文句でさえ
今はどうでも良かった


『愛してる』


タクが見せたあの表情
あの…泣き出しそうな、顔


それだけが頭にこびりついて
離れなかった



ーーーーーーー結局その日BARを出るまで

タクの姿を見る事は無かった。