朝の空気は澄んでいて
とても冷たい
車の中でタクはクスクスと笑いながら言った
「てかユエ、高校生だったんだな?」
「…悪かったわね」
バツが悪そうに私が顔を背けると
タクはまたクスクス笑った
「ユエは大人っぽいから高校生には見えないよ」
「大人っぽいかな?」
「うん。世の中の汚さとか全部知ってそう」
その言葉を聞いた私もまた
自嘲的に笑った
「ユエ、着いたよ」
「うん」
車から降りると
“チュッ…”
タクはこの前と同じように
軽めのキスを落とした
「じゃあね。ユエ」
「タク…ありがと」
そう言って私はマンションに入ろうと
後ろを向く
「…っ」
走り去る車のエンジン音
そこに息を飲んだ声が混じった
「結映…」
そこに居たのは、
紛れもない
翔琉だった