「んじゃー....何の教科やる?」
佐野くんが言うと千里は席を立った。
えっ、千里どこいくの!!
二人にしたいらしい。
佐野くんは千里が座っていた席に座った。
つまり私の前。
机をひとつ挟んで私たちは向き合った。
「えっと....数学....かな!」
「数学かー....」
私は教科書を出した。
貸して、と佐野くんが手を出す。
渡すと佐野くんはすぐに今やっているところのページを開いた。
そして向きを私の方にしてくれて椅子を引いた。
その瞬間、とても近くなって。
ドキドキした。
「二次不等式はさー....」
佐野くんに失礼って、不謹慎だって分かってるのに
ああ。ドキドキがおさまらなくて。
左手で頬杖をついて右手はたまにペン回しをしている。
説明する声も好き。
ちらっと佐野くんの顔を視ると教科書をまじまじと見ながら教えてくれている。
「佐倉?」