佐野くんは驚いた声を出した。
【いや、え?遅刻しちゃうよ?……わっ】
満員電車の人混みに押されてか佐野くんが声をもらす。
「うん…あの、いいの。」
こんな不純な理由で遅刻なんて言えないけど…。
【えぇ?なんで?】
鈍感で天然な佐野くんは気づいていないようだ。
「私そんな真面目ちゃんじゃないし!今日は気分が乗らないの」
と、言ってみる。
佐野くんなんて思うだろうか。
【あはは!佐倉でもそんな時あるんだね。
ごめんね俺のせいで。じゃあ待っててもらえる?】
私の決断を否定しないでくれる。
「うん、待ってる。
何?結構やばいの?」
私が聞くと佐野くんの声のトーンは一気に下がる。
【うん…よく見えないんだけど…
警察とか救急車とか…】
その言葉の瞬間、鳥肌がたつ。
「えっ…?」
【結構やばいね〜】
そ、そんなに…。
「えっ」
ど、どうしよう…
想像してしまった。
やばいって…ぐしゃぐしゃ?何も残らないくらいに?
…うっ…
そして気持ちが悪くなってきた。
私はそういうの苦手なのに…!