龍輝side
「じゃあ、バイバイ佐倉」
分かれ道に来た。
「またね!佐野くん」
佐倉は俺に手を振ると背中を向けた。
“またね ”
…か。
またっていつ?
また会いたいと思ってる?
いいや、思ってるのは俺だけだね。
“ ありがとう”
そんなの言わなくてよかったのに。
むしろ逃げられるかと思っていた。
なんであんな行動とったのか自分でもわからない。
なのに。
イヤホンを渡した俺に佐倉はありがとうと言ったんだ。
……礼なんか………
これで俺のことを意識してくれたらいいのに。
少しでも佐倉の心の隅に入り込めたならいいのに。
気づくとまわりは暗くなっていた。