「ねぇ佐倉…」
力を入れても全くビクともしない。
佐野くんの力は強かった。
「俺だってさ…男なんだよ?」
「…な、に言って……」
佐野くんはさっきよりもっと顔を近づける。
「優しい男友達じゃない」
佐野くんは何を言っているの?
私の鼓動が早くなる。
いつもと違う彼を見て焦る。
でもそんな佐野くんはどこか哀しそうな表情をしていた。
「佐倉」
そう言って佐野くんは私の右肩に頭を乗せた。
こ、この状況は…一体……?
私が混乱していると…
「………………隙がありすぎる……」
佐野くんが何かを呟いた。
でも私は聞き取れなかった。
「…え?なに…」
私が聞き返そうとした瞬間、佐野くんは手を離して、
「…なーんて…
驚いた?」
と言った。
いつもの佐野くんの笑顔がそこにはあった。