見上げると…






「佐倉…泣いてるの?」







佐野くんだった。





「佐野くん…」



私は急いで目をこすった。



「ううん。大丈夫」



そして私は立ち上がると歩きだそうとした。




「佐倉」



佐野くんが私の腕を掴む。




「せっかくなんだし。まわらない?」



優しい微笑みで私を見る。





悲しい。




哀しい。



心に穴が空いたようだ。




誰かがこの穴を埋めてくれるといいのに。



それが雄大であってほしい。



でも、今は。




ただただ悲しくて。



差し出された手を掴むしかないの。



「うん」



私も笑顔で佐野くんに頷いた。