そう思った。



「榎本…」


「私ね…、左耳が聞こえないの…。知ってた?」



目にたくさんの涙をためながら聞いてきた。



一瞬言葉を詰まらせたが



「…あぁ」



素直に答えた。



「やっぱり。なんか行動っていうか…知ってそうだったから」


「わりぃな…」


「別に。知られたくないことじゃないから」



ははっ。



乾いた声で笑う榎本を見て、無性に泣きたくなった。