日向に案内されるがままに、教員室に入り、日向のデスクに着いた。他の先生は、何やら物なので溢れているが、日向の机は驚くほど物がない。パソコンが一台、唯一あるくらいだった。

周りに気を取られている雫を差し置いて、日向は近くの棚にあった物をを持ってきて


「・・・じゃあ、これ。運んどいて。自分もすぐ行く。」


と最後の一言に雫は敏感に反応した。


「了解致しました。これ、可能な限り配っときます。」


沢山の冊子プリントを落とさない程度で会釈をし、大きな声で「失礼しましたー!」


といそいそと教員室を出て行った。








ぺらぺら…と薄い紙をめくる度、自分も薄い人間だよなぁ。と思い知る。


「……っ!!!」


雑念が牙を向いたのか、雫はプリントで手を切った。



雫はいわゆる、元気っ子タイプで、可憐でおしとやかな性格ではない。なので、女子力も持ち合わせてはおらず・・・。


この指をどうしたものかと、悩んでいると


「すまない。指サックを・・・手遅れのようだな。」



雫は少しだけ期待していた。そろそろ来るのではないか、と。


実際その通りで、なぜか顔が自然にほころんだ。