雫は“何か”が心に引っ掛かった。

無意識に“何か”がおかしいと感じた。


でも雫はその“何か”が具体的には分からず、ボケっと立っていると


教室の中から凌が

「そこで何しているんだ」


と声をかけた。すると我に返った雫は、


「あぁ・・へへへ。すみません。」


と教室に入った時、


誰も居ない、暗い、静かな、何も無い無機質な様子に、雫は一瞬凍りついた。しかしすぐに取り繕い、あらかじめ教えてもらった自席に荷物を置いた。


すると凌は


「雨宮。少し雑務を頼んでも良いか?」


と訊いた。


早く出たい雫にとっての口実には十分だった。



「新入生の扱い・・・荒いんですね。先生。」



言葉と気持ちが全く真逆な事を、凌は何となく察した。