私は、この手紙を読んで、しばらくの間、その場に座り込み、ボーッとしていた。

頭のなかがゴチャゴチャだったのだ。

いきなり、『ゲーム研究者』とか、『人間界とゲーム界の空間の割れ目』とか、そんなこと言われても、理解できるわけがない。

その手紙はとりあえず、机の引き出しにしまい、段ボール箱は、たたんで、お母さんに渡しておいた。

今日のゴミのチェックは、臨時終了だろう。


それから、数時間。

私はベットに横になり、できる限り、頭の整理をした。

難しい事は、やっぱり理解出来なかった。

でも、1つ、理解出来たことがある。

あのゲームのカセットの中で、お父さんが生きているかも知れない、ということだ。

ゲームの中に人が入るなんて、信じられない非常識な事。

だけど、今の私には、それを信じるしか、自分の気持ちを正常に保つ事が出来なかった。


夕食を食べ終わった後、私は窓をおおきく開け、ひじを戸につき、あごを手の上において、星たちを眺めた。

綺麗な星を見つめていると、何もかも忘れてしまう。

でも、お父さんの事だけは忘れられる訳が無かった。

私が思っていることはただ1つ。

『お父さんに会いたい』

ということだけ。

気付けば、星を眺めて数時間。

時計はもう、深夜の2時を回っていた。

こんなに遅くまで起きていても、全く眠たくならなかった。

『お父さんに会いたい』

この文字が、頭の中を回り続けているからだ。

私は、何かが降りてきたかのように、呟いていた。

「お父さん達は、人がゲームの中に入って遊ぶことが出来るカセットを作った。それが、あのカセット。そして、お父さんは今もあの中に…。」

そして、その降りてきたものは、地面に落ちた。

「…なら私も!私もゲームの中に入れるんじゃ…?」

なんだか、危険な予感もしたのだが、そんな気持ちはほったらかし。

今の私の『お父さんに会いたい』という願望を叶えてくれるのは、この方法しか無かった。