『四つ、ゲーム界の者に、自分の正体を明かさない。
 五つ、もしも明かしたとするならば、無断侵入と同じ罪を受けて もらう。全ての記憶を失い、ゲーム界の人間となること。』

お父さんは、ゲーム界の人間。

私の正体を明かすことは、許されないんだ。

お父さんに会えた。

それはとても嬉しい。それだけで終わるはずだった。

でも、お父さんは私の事を思い出してしまった。

あんな約束がなければ、お父さんとハグすることだって出来たんだろうな。

でも、それをすることは許されないんだ。

あくまで私は、シャリアであることを、突き通さなければいけないんだ。

「なぁ、君は、理亜なんだろ?答えてくれ。」

お父さんは、必死に訴える。

そうだよ。

そうだよお父さん。

私の正体が分かってるんなら、今すぐにでも抱き締めてよ…。

「何を言っているんですか?私はシャリアですよ。」

声は、震えていた。

「声、震えてる。嘘はつかないでくれ。」

お父さんの、バカ。

そんな嘘、見破らないでよ。

「私はシャリアです。」

私はこの台詞を繰り返すしか無かった。


すると。

か、体が…。

私の体が薄れていったのだ。

あぁ、人間界に戻るんだ…。

私は、私の事を追求するお父さんに、一言いった。

「シャドウさん、あえて良かったです。」

…どうして偽りの名前を使わなくてはいけないの?

本当はお父さんって呼びたかった。

お父さんさんって、子供みたいによんで、今すぐお父さんの、胸に飛び付きたかった。

…でも。それは許されないんだ。

なんとかこらえていた涙も、最期には、ほほを伝ってしまった。

「理亜!理亜!」

私の名前を呼ぶお父さんの声がどんどん遠ざかっていった。

こんな悲しい終わりかたって無いよ…。

でも私、お父さんに会えて良かった。

本当に、それだけで…。