「何かしら?これは……?」

 興味本位でその雑誌を手に取った。
雑誌には、『デートスポット特集号』と書いてあるじゃないか。

 ペラッとめくると○○植物園などに付箋が付けてあった。
 もしかしてこれを見て選んでくれたのかしら?
違う付箋のを見るとレストランにも貼ってある。
やっぱり……。

わざわざ雑誌を買って参考にしたのだろう。
 その姿を想像したら何だか身体の中がポカポカした。
キュンとする気持ちが確かにあった。

「課長……可愛い」

そう自然に想うと笑みがこぼれた。
 しばらくして課長が飲み物を持って慌てて戻ってきた。

「すまない。何が好きか聞くのを
忘れて戸惑っていた。あ、松井……それは!?」

 私の持っている雑誌に気づかれてしまった。
あ、読んでるのバレちゃったわ。
 どうしよう……えっと。

「今さっき見つけて。これ課長が買ったんですか?」

「あぁ、まぁ…女性と出かけるとしたら
 何処に連れて行けばいいか分からなくてな。
参考までに…少々……」

 課長に質問すると目線を逸らしてきた。
そして段々と声が小さくなっていく。
 どうやらかなり照れている様子だった。
クスッと笑えてしまう。

「ありがとうございます。素敵な計画ですね!」

「とにかく行くぞ。シートベルトをしておけ」

 笑顔でお礼を言うと課長は、慌てたように
自分のシートベルトをはめた。
 どうやらさらに照れてしまったようだ!
シートベルト……私の方は、すでにはめているのに
 私は、クスクスと笑いながら雑誌を元に戻した。