「いえ、何でもありません」

 ハッとすると慌てて前を見るが
心臓が高鳴りっぱなしだった。
 結局。最後まで集中出来ず内容をサッパリ覚えていなかった。
 せっかくの映画だったのに……。
感想するほども覚えていないわ。

「さすが、話題になるだけあって良かったな。
DVDになったらレンタルするか…いや買おうかな」

 どうやら課長の方は、この映画を気に入ってくれたようだ。
 良かった……。退屈させたらどうしようかと思ったし。
気に入ってくれてホッとした。

「昼過ぎてしまったが…お腹空いたな。
何か食べて行くか?」

「あ、はい」

 慌ててそう返事をした。そして近くの
ファミリーレストランで遅めの昼食を食べる事となった。
 課長とファミリーレストランだと何だかミスマッチな印象だ。
それに思わず笑えてしまった。

「うん?どうした?松井」

「あ、いえ……何だか面白くて
あ、いえ……何でもありません。すみません」

いけないわ。つい本音が……。
 意味が分からない様子の課長は、首を傾げていた。
 慌てて曖昧な返事をするが逆に不思議がられたかも知れない。

「……そうか?それよりメニュー決まったか?」

あ、そうだった!!
 慌ててメニューを見る。えっと……。
うっかり何をするか考えていなかったわ。

「えっと……私は、このカルボナーラとシーフードサラダにします!」

「うむ。分かった」

 呼び出しボタンを押し一緒に注文をしてくれた。
課長は、和風ハンバーグセットにしていた。
 ハンバーグとか意外で可愛らしいと思った。