どこかワクワクしている様にも見える姿は昔の彼も良くしていたかもしれない。


それこそ秘書時代にこの笑顔に振り回された。


ああ、あまり良い記憶じゃない。


ストレスの対象でもあったのだから。


久しぶりに嫌味な笑みをしっかりと浴びながら、嬉々として私の話を待っている男に溜め息をつく。


この男を喜ばすような秘密は不本意だけども、それでもここまで来たのだから言わなくては。


そう意を決するとゆっくり視線を合わせて姿勢を伸ばした。




「・・・・・逐一。確認しておられたのですよね?」


「うん、だからナウ彼女だって知ってるよ」


「そうですか・・・、ならお話は早いかと、」


「何?結構ビックリしちゃう事?」


「・・・・断言しにくいです。何せ契約婚なんて非常識を受け入れる感性をお持ちですから」


「あはは、血筋です」


「まぁ、たいした事ではないありふれた事なんですが・・・」


「うんうん、どうした~?」


「・・・子供が出来ました。勿論・・・ご子息の茜さんとの子供です」


「・・・・」


「よって、しかるべき義務として彼には遅かれ早かれ私と再婚の形を取っていただきたいと思っております。

なので・・・・、


息子さんを再度私にいただけないでしょうか?」



はっきりと躊躇うでもなく、それこそ仕事の内容を語るように宣言したと思う。


そして特別驚く対象でもないと判断して言い切って頭を下げ、ゆっくり顔を上げた時には驚愕。


私が・・・、いや、彼も。


滅多に見ることのできない黒豹の驚愕で唖然とした表情に、一瞬は驚き直後に噴いた。


だって、


今更妊娠宣言くらいで驚くような人だとは思ってなかった。


さすがに失礼かと思い咄嗟に口元を覆えば、何を誤解したのか慌ててその身を起こした姿。



「っ・・・具合悪い!?」


「はっ?」


「ちょっ・・・横になる?うわぁ・・、ま、待って・・・何か今飲み物・・・」


「あの・・・、落ち着いてください。そして別に何も催して無いですから」


「っ本当!?大丈夫!?大事な時期でしょ!?」



瞬間思いっきり噴き出してしまった。


だって・・・、驚くほどの過剰反応なんだもの。