くすぐったい。


そう、くすぐったいのだ。


揺れて肌を悪戯にくすぐる彼のフードが。


それすらも焦らすような愛撫の一つの様で、彼が動くと同じに不規則な刺激を肌に与えて。


それですら普段は滅多にしない【耐える】物の対象であるのに。



「・・っ・・・・」



服の裾から覗く肌に黒革の質感。


何とも言えない馴染みのない感触にゾクリと感じて、今にも漏れそうな声を必死にとどめて目を細めた。


フードと手袋。


何て厄介で・・・・・困る。


変に熱が上がる行為に余裕なく必死に堪えていれば、耳に入る吐息にもいちいち反応してしまって。


そして不意に意識する彼のいつもの香り。


こうなってくると媚薬の様だとも感じ、今にも涙が浮かびそうな程の目で改めて彼を捉えて・・・。






あっ・・・、




なんか・・・・、




犯されてる感じ。






と、思った瞬間に感情の決壊。



「・・・っ・・・あっ・・やぁっ・・」


「・・っ・・・千麻ちゃん?」


「っーーーーーやぁっ!!!」



羞恥心爆発。


そんな勢いで滅多に上げない怯んだ声を部屋に響かせると、呆気にとられて隙の出来た彼の胸を押し返して不動になる。


でもすぐに体を捻ってうつぶせになるように顔を枕に埋めて隠した。


理由?


そんなの・・・・顔が尋常じゃないくらい熱く、きっと赤い筈だから。


心臓が痛いくらいに速い。


自分の体に強く響く心音を感じながら羞恥心に悶えていれば、ようやく硬直から解けたらしい彼の戸惑いの声。



「・・っ・・あの・・・千麻ちゃん?」



どうしたの?


そんな響きの声に反応を返さないわけにもいかず、動揺に表情が崩れているのを理解していたけれど、渋々顔半分程を彼に向け視線を上げた。


あっ、ヤバい・・・。


動悸強くなる。



「・・・・・・ダメ」


「・・っ・・・何が?」


「今日は・・・・しない」


「っーーーーーー!?」


「・・・・・・出直し」



やや紅潮した顔を枕に隠して伏せながらの上目遣い。


別に意図としてしたわけでなく、純粋に自分の顔を見られたくなかっただけだったのに。


彼から見下ろした私はどうやら彼の心をがっつりつかむような姿だったらしい。